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CSR報告書の情報は信頼できるの?(後編)

前回のコラムでは、アメリカのバイオ科学企業モンサントのCSR報告書と映画の情報を比較し、開示されている情報のギャップについてお伝えしました。

CSR報告書を読んでいる人々を対象としたアンケートの結果を見ると、「良いこと、できたことしか書かれていないから信頼できない」という回答がよく見られます。確かに、多くの企業は自社の活動の成果を強調し、課題・問題となっていることについてはあまり語りたがりません。これでは、読んでいる方は、企業の本当の姿を読み取ることができませんし、知識のある読者は反対に不信感を高めることにもなってしまうでしょう。

そこで、CSR報告書の作成の仕方を定めたGRIガイドラインには、報告書の品質を保つために以下のような指針があります。

「全体的なパフォーマンスの道理にかなった評価を可能とするために、組織のパフォーマンスのプラス面とマイナス面を反映させるべきである。」つまり、企業は公平な事実を提示すべきであり、好ましい結果も好ましくない結果も両方を盛り込むべき、というものです。

そして、信頼性を測るもう一つのポイントは、「ステークホルダー(利害関係者)の参画」です。報告書においては、社会が知りたいこと、問題と感じていることに答えることが求められているからです。社会の人々が何に問題を感じ、情報開示を求めているかを知るには、ステークホルダーと対話していくことが欠かせません。

モンサントのCSR報告書では、15ページにわたって、各分野のステークホルダーとどのように対話しているかを報告しています。実際にどのような意見があるのかは具体的に掲載されておらず、批判的な意見も見られないので、少し偏りを感じますが…。その他、社会にとって関心が高いと思われる、遺伝子組み換え食品の表示についての自社の考え方を詳しく丁寧に示していることも、工夫が見られます。

CSR報告書を読むときには、本当に重要な情報を開示しているか、ネガティブな結果もきちんと開示しているかをチェックしてみると、その企業のCSRへの本気度が見えてくるのではないでしょうか。

モンサント「企業の社会的責任およびサステナビリティ報告書 2011」
http://www.monsanto.co.jp

197号(12年10月10日発行)

CSR報告書の情報は信頼できるの?(前編)

この夏、全国で上映が始まった映画「モンサントの不自然な食べもの」をご存知でしょうか?モンサントはアメリカの巨大バイオ企業で、遺伝子組み換え(GM)の大豆やとうもろこし、綿花などの種子を世界中で販売し、そのシェアは90%を占めています。この映画は、フランスのジャーナリスト、マリー=モニク・ロバンが、モンサント社の裏側を追うドキュメンタリーです。GM作物が農家や地域の生活、健康や生態系に及ぼす影響を、科学者や農民などの証言をもとに訴えています。映画を見ると、利益追求のためには研究データまでもねじ曲げてしまうモンサントの行動が恐ろしく思えます。

一方で、モンサントは「企業の社会的責任およびサステナビリティ報告書」を発行し、GM作物の安全性や、収量の増加による農家への貢献、農薬の使用量削減による環境への貢献を訴えています。今後、世界の人口が増加しても食料が安定的に供給されるように、2030年までに、大豆やとうもろこしの収量を2000年比で2倍にするという目標も掲げています。報告書を読むと、GM作物がいかに安全で、農業の持続可能性に貢献しているかを知ることができます。

同じ企業の行動でありながら、映画と報告書では、まったく異なる印象を受け、何が真実なのだろうと混乱を覚えます。

映画の中で、インドの綿農家の事例が紹介されていました。モンサントの供給するBT綿(殺虫剤を生成する遺伝子が組み込まれている綿花)は、従来の綿の種に比べて価格が2倍もするため、農家は負債を抱えて自殺する人が増えているというお話。

報告書にもインドの綿農家の事例が掲載されており、ここでは、BT綿の導入により綿生産量が2倍になり、種を買うコストは30%削減できたと書かれています。

どちらも実際にあった事例と思われますが、どちらも、それがすべてではないということを理解しながら情報を読み解かなければなりません。

ここで言えることは、報告書を作成するとき、そして読むときに「掲載する情報のバランス」と「ステークホルダー(利害関係者)の参画」が大切なポイントであるということです。次回のコラムでこれらの2つのポイントについて詳しくご紹介したいと思います。お時間の許す方は、映画と報告書をぜひ見比べてみてくださいね。

モンサント「企業の社会的責任およびサステナビリティ報告書 2011」
http://www.monsanto.co.jp

映画「モンサントの不自然な食べもの」公式サイト
http://www.uplink.co.jp/monsanto/

196号(12年9月26日発行)

マテリアリティをどう報告するか

今回ご紹介するのは、世界最大級の醸造会社の一つ、SABミラー(飲料イギリス)。南アフリカを中心に発展を続け、今では75カ国で200以上のビールブランドを展開しています。

早くから質の高いCSR報告を行ってきたことで知られていますが、評価の大きなポイントは、10のプライオリティ(優先課題)を明確に定めていること、そして活動の進捗をわかりやすく示していることです。

プライオリティは、CSR報告では「マテリアリティ(重要課題)」と呼ばれることが多く、CSR報告の最も重要な要素となります。例えば、自動車メーカーであればCO2排出やエネルギー問題と関わりが深いですし、製薬会社であれば人々の健康問題と関わりが深いといったように、業種ごとに関連する社会課題は異なります。自社の事業がどのような社会課題に最もインパクトを与えるかを考え、その社会課題について優先的に取り組むことが求められるのです。

そういった意味で、南アフリカを主要な拠点としてきた醸造会社であるSABミラーの10のプライオリティは、非常にうまくまとめられています。

 <10のプライオリティ>
  ・飲酒に関する問題を削減する
  ・より少ない水でビールを製造する
  ・エネルギーとカーボンフットプリントを低減する
  ・容器は、再使用とリサイクルを行う
  ・廃棄物ゼロをめざす
  ・取引先の発展を促す
  ・地域社会の発展に貢献する
  ・HIV/エイズの削減に貢献する
  ・人権を尊重する
  ・透明性と企業倫理を向上する

そして、取り組みの進捗は、毎年それぞれの課題ごとに5段階で評価され開示されています。「5」は業界をリードするレベル、「4」はベストプラクティスで、「1」は最低限の標準レベルということです。

例えば、「より少ない水でビールを製造する」という課題については、2011年から2012年で、スコアが2.5から2.6へアップ。その背景には、ビール製造1リットルあたりの水使用量が4.2リットルから4.0リットルに削減したというデータが示されています。

マテリアリティの進捗を定量的に報告していくことは、難しく捉えられがちで、あまり多くの企業で進んでいません。SABミラーの事例を参考に、自社のマテリアリティは何か、どうわかりやすく報告できるかを考えてみてはいかがでしょうか。

カーボンフットプリント:製品の一生(原料の調達から廃棄まで)に排出されるCO2の量

SABミラー サステナブルディベロップメント
http://www.sabmiller.com/index.asp?pageid=4

195号(12年9月12日発行)

ソーシャルビジネスの先駆け「Ben & Jerry’s」(後編)

企業の社会的責任をいち早く認識し「価値主導」のビジネスモデルを実行してきたBen & Jerry’s。ビジネスそのもので社会に貢献すべきという考えから、思い切った目標を掲げました。それは「2013年までにアイスクリームの材料すべてをフェアトレード認証を受けたものにする」というもの。認証の対象となるカカオやバニラ、ナッツなど120種類以上に及ぶ材料すべて、しかも、全世界のBen&Jerry’sのアイスクリームすべてをフェアトレードにしようという取り組みです。

その背景には、発展途上国の生産農場における環境問題や児童労働などの問題があります。子供たちが休日もなく、学校にも通わせてもらえず、危険な労働を強いられています。フェアトレードを進めることで、生産者が不当に搾取されることなく公正な収入を手に入れられるようになるのです。創業者は「フェアトレードの考え方は、関わるすべての人たちが、パイの公正な取り分を得られるようにすること。これは、Ben & Jerry’sの企業理念や善悪の価値観とも共通した考え方です。一部の人たちを不当に搾取し作られた製品を、誰が買いたいと思うでしょうか。」と語っています。

こういった活動の拠り所になっているのが、同社のミッション(全文はこちらhttp://www.benjerry.jp/our-values/mission-statement)です。社会的使命として「企業が社会の一員として果たすべき役割をきちんと認識しながら、革新的な方法で地域の、国内の、そして世界の人々の生活を向上させる。」と掲げており、言葉だけ見ると、どの企業でも唱えていそうな文言です。
しかし異なるのは、社会/製品/経済に関する3つのミッションを同じ優先度でとらえていること、そして、このミッションが業務の中に深く浸透しビジネスの判断基準となっていることです。形骸化しがちなミッションを業務に浸透させることがCSR推進の大きな鍵と言えそうです。

フェアトレード:開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」

Ben & Jerry’sホームページ
http://www.benjerry.jp/

194号(12年8月22日発行)

ソーシャルエンタープライズの先駆け「Ben & Jerry’s」(前編)

猛暑の夏に欲しくなるのは、やっぱりアイスクリーム!ということで、今回はBen & Jerry’s(食品 アメリカ)を紹介します。世界27カ国、800店舗以上をかまえるアイスクリームチェーンで、今年4月に日本に初上陸し表参道に出店したことでも話題になりました。このBen & Jerry’sが「ソーシャルエンタープライズ(社会的企業)の先駆け」と呼ばれていることをご存知でしょうか。

Ben & Jerry’sの創業は1978年。中学からの友達であるベンとジェリーが、大学受験に失敗したり、アルバイトをクビになったりと行き詰まっている頃2人で何か始めようと思いついたのがアイスクリームショップでした。お金が無かった彼らは、5ドルの通信教育でアイスクリームの作り方を学び、お店を開いたそうです。

その後、事業は拡大していきましたが、立ち止まって考えてみたところ「私たちがやりたいのはビジネスでお金を儲けることではない、世の中を良くすることだ」と気がついたと言います。

彼らは事業の成功を、利益だけではなく「世の中をどのくらい良くできたか」で測ろうとしました。成果を定量的に把握するために14の指標を定め、財務指標と同様に第三者の監査を受け、進捗を客観的に評価しました。そして、悪い結果が出たとしても隠さず社会に公開していたのです。

今でこそ、CSR(社会的責任)の概念が浸透し、環境や社会的側面の活動が報告されるようになりましたが、これは20年以上も前の話。Ben & Jerry’sは1988年のアニュアルレポートから社会的側面の報告を始めました。どの会社も財務報告だけの時代に、財務報告と同じレベルで社会的側面の報告を行っていたことは驚きです。

そして、そのレポートも大変ユニーク。ポップなイラストと手書き風の文章は見ているだけで楽しい気分になります。Ben & Jerry’sの信念である「少しずつでも世の中を良くすることを楽しくやろう」という思いが強く伝わるレポートでした。2000年にユニリーバグループの一員となってからは、残念ながら独自のレポートは出していませんが、ウェブサイトも楽しい雰囲気なので、ぜひご覧ください。

次回は、Ben & Jerry’sの具体的な活動を紹介していきます。

Ben & Jerry’sホームページ
http://www.benjerry.jp/

193号(12年8月8日発行)

サステナブルビジネスへの転換に向けた「Plan A」

CSRレポートにご関心が高い皆さまも、海外のCSRレポートとなると、あまり目にする機会がないかもしれません。しかし、海外のCSRレポートには、優れたビジョンやユニークな取り組み、素敵なデザインなどが溢れていて、学べることも多いはず。そこで、今回から、オススメの海外のCSRレポートをご紹介していきたいと思います。

今回は、オリンピックで沸き立つイギリスから、Marks & Spencer(マークス&スペンサー:M&S イギリス 小売り)を取り上げます。

M&Sは、食料品から衣料品、日用品まで幅広い商品を扱うデパート。2007年に、サステナビリティを実現するための画期的な計画「Plan A(プランA)」を発表して話題になりました。これには、2015年までに達成すべき180の目標が組み込まれています。「Plan A」という名前には、「地球上の資源を守るためには、それ以外の選択肢=Plan B はない」という決意が込められました。

目標を定めている企業はたくさんある中で「Plan A」はどう違うのでしょうか。それは、その網羅する範囲の広さにあるとM&Sは述べています。M&Sの事業に関連するすべてのサステナビリティ課題を網羅するとともに、すべての店舗や工場、サプライチェーンがコミットしているとのこと。つまり、ビジネス全体をサステナブルな方向にシフトさせるための中心的なビジョンと位置づけているのです。「Plan A」の進捗は半年ごとに役員会でレビューされ、その達成度合いは役員報酬にも連動するという徹底ぶり。

一方で、このような活動には大きな費用がかかります。M&Sはコストの算出において、「多くの消費者はサステナビリティのためにコストを負担しようとは思わないだろう」という前提のもと4千万ポンドの費用を見積もりました。そして驚くことに、1年目はコストが生じたものの、3年目以降は、資源効率の向上などによってコストの何倍もの利益があがったということです。

活動を進める中で、サステナビリティへの取り組みは、経費を節約し、社員にひらめきを与え、イノベーションを起こし、弾力的なサプライチェーンをつくり、そしてブランド力を強化することが社内で認識されていきました。

ビジネスをどのようにサステナブルな形に転換していくのか、多くの企業が試行錯誤している今、M&Sのとった手法はヒントを与えてくれるかもしれません。

Reports & publications(英語)
http://corporate.marksandspencer.com/investors/reports_publications/2012

192号(12年7月25日発行)

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